Q16 会社役員の休業損害

Q.私は先日交通事故に遭い,怪我を負いました。それで,病院に通院するために仕事を休んだときがあり,その分の休業損害を保険会社に請求したいと思っています。私の仕事は会社の代表取締役で,会社からは役員報酬として年俸600万円を受け取っています。私のような会社役員の休業損害は,一般の労働者と異なる扱いになるのでしょうか。

 

 交通事故に基づく怪我の治療のために仕事を休まざるを得なくなった場合,会社役員であっても休業損害を請求できるのが原則です。しかし,いくらの金額を休業損害として計算するかは,一義的に明確なやり方があるわけではなく,争いになるケースが多いです。

 なぜかと言うと,会社役員が受け取る役員報酬は,会社との間の委任契約に基づき支払われるもので,その報酬の中身の性質は「労務対価部分」と「利益配当部分」に区分される,と言われているからです。

 つまり,会社役員が実際に何らかの労働をしたことの対価としての意味を持つ部分と(前者),会社役員として行った経営の結果,会社に利益がもたらされたことの一部が還元されたという意味を持つ部分(後者),に分けて考えられています。

 そして,休業損害は,物理的に仕事を休まざるを得なかったために被害者の勤労収入が減った部分を補償するという目的のものなので,必然的に会社役員の報酬のうちの「労務対価部分」だけが対象となります。

 そうすると,設問の方の場合,年俸600万円のうち「労務対価部分」はいくらなのかを考えなければなりませんが,これをいくらと算出すべきかは,前述のとおり一義的に明確なやり方はありません。事案ごとに,ケースバイケースで考えていく必要があります。どういう要素を勘案して「労務対価部分」と「利益配当部分」を分けるべきかというと,裁判例では主に,役員報酬の額そのもの,会社の規模・収益状況・業務内容,当該役員の地位・職務内容・年齢,当該会社の従業員に対する給料の額,当該会社の他の役員に対する報酬の額,類似の会社における役員報酬の支給状況,などを総合的に考えるという形が多いです。

 以上のとおり,会社役員の報酬のうちの「労務対価部分」をどのように考えるかは,かなり抽象的な枠組しか定まっていませんので,具体的な算定の仕方次第では大きく金額に差があり得ます。被害者の方としては,なるべく多額の休業損害をきちんと払ってもらいたいというのは当たり前の発想なので,こういうケースでは弁護士に依頼することをお勧めします。当事務所は,豊富な交通事故事案の解決実績がありますので,お気軽にご相談いただければ幸いです。