Q23 少額訴訟・支払督促

Q.私は自転車に乗っていたところ,交通事故の被害に遭い,怪我をして,自転車も壊されてしまいました。加害者の方は,任意保険に入っていませんでした。怪我の方は軽く済んだので,しばらく病院に通って今は治癒しています。その分の治療費,慰謝料などは,自分で自賠責保険に請求を出して,支払ってもらうことはできました。しかし,自転車が壊れて新しいものに買い替えたのですが,その分の費用10万円は,自賠責保険の対象外と言われて支払ってもらえませんでした。加害者も進んで弁償しようという姿勢は見られません。私は弁護士費用特約も使えないので,10万円くらいだと自費で弁護士に依頼した場合赤字になるかもしれず,ためらっています。そこで,自分でできる手段で加害者に請求することを考えていますが,どういう手段があるのでしょうか?

 

 以前にこのコラムで,弁護士費用特約が適用できる場合の解説をいたしましたが,今回は弁護士費用特約が使えないという前提の相談です。そうだとすると,自費で弁護士費用を負担しなければなりません。

 弁護士費用でいくらかかるかは,弁護士ごとに自由に料金を設定できますので,まちまちです。ただ,一般的によく見られる料金形態としては,着手金と成功報酬の二段階で料金を支払ってもらうというやり方です。着手金とは,依頼した最初の時点で支払ってもらうもので,これは事件の結果がうまくいこうといくまいと,後で返金したりはできません。成功報酬とは,弁護士の介入によって依頼者にとって良い結果(損害賠償の示談が成立したなど)がもたらされたときに,あらかじめ決めておいた金額や割合に応じて,支払ってもらうものです。

 したがって,損害賠償の金額が10万円くらいだと,着手金+成功報酬として支払うお金の方が超過することはあり得ます。ただ,最近は着手金無料,成功報酬のみで受けてくれる弁護士も増えていますので,そういう弁護士を探して依頼するというのも一つのやり方です。

 さて,ご相談の中身は,弁護士に頼まないでも自分でなんとかできる手段はないか,ということですが,加害者が任意の交渉では誠実に対応してくれないという場面では法的手続に移行するしかありません。

 ここで初めに注意すべきは,我が国では本人訴訟が法律上許容されているので,通常の民事訴訟を弁護士に頼まないで本人が起こすことは禁止されてはいません。しかし,現実的に民事訴訟を適切に進めるには,法律の知識や裁判所のルールなどに通じている必要があるので,よほどしっかり自分で勉強しないと,本人訴訟は難しいでしょう。

 まず,少額訴訟という制度があります。これは,簡易迅速な手続により60万円以下の金銭の支払を求める訴訟です。通常訴訟に比べて,よりシンプルなルールで訴訟が行われます。また,原則として1回限りで審理を終えることになっていますので,長期間訴訟が続く事態も避けられます。なお,少額訴訟で出された判決に不服があるときは,その同じ簡易裁判所へ異議を申し立てることができます。少額訴訟を提起するには,管轄の簡易裁判所へ訴状を提出することが必要です。

 次に,支払督促という制度があります。これは,訴訟のように裁判所において審理期日が設けられるわけではなく,被害者が提出した書類の審査のみで裁判所が支払督促を加害者に対して発布してくれるというものです。支払督促を行うには,管轄の簡易裁判所へ申立書を提出することが必要です。

 支払督促を受け取った加害者は,その請求内容に不服があれば裁判所へ異議を申し立てることが許されており,異議が出された場合は通常訴訟に移行することになります。異議を申し立てることができるのは送達を受けた日から2週間以内なので,その期間内に何も出されなければ,支払督促を根拠にして強制執行をすることができるようになります。

 注意が必要なのは,前述のように,支払督促の発布にあたっては裁判所の審査がありますので,交通事故の損害賠償の場合には支払督促の制度になじまないとして却下されることもあり得ます。例えば,過失割合で双方の主張が大きく食い違っている事件とか,慰謝料の金額で争いがある事件などは,具体的に細かな事実を認定した上で法的判断を下す必要があるので,書類のやり取りだけの支払督促では誤った請求になる可能性があり,こういう場合は裁判所としても支払督促を発布することはできない,と判断されることがあります。

 以上のとおり,弁護士に頼まないでも個人で行うことが比較的容易な法的手続が用意されていますので,チャレンジしてみるのもよいでしょう。

 しかし,それらの手続で加害者からすんなり支払いを得られれば良いですが,加害者の方で争ってきた場合には,結局通常の訴訟に移行せざるを得ません。当事務所は,過去に豊富な交通事故事件の解決実績がありますので,個々の相談者の方のケースにあった最適な解決方法をアドバイスすることが可能です。何かお困りごとがあれば,お気軽にご相談ください。