Q.私は自転車に乗っていたところ交通事故の被害に遭い,怪我を負ったのと,自転車が壊されてしまいました。加害者の方は,任意保険に入っていませんでした。怪我の方は軽く済んだので,しばらく病院に通って今は治癒しています。その分の治療費,慰謝料などは,自分で自賠責保険に請求を出して,支払ってもらうことはできました。しかし,自転車が壊れて新しいものに買い替えたのですが,その分の費用10万円は,自賠責保険の対象外と言われて支払ってもらえませんでした。加害者も進んで弁償しようという姿勢は見られません。10万円くらいだと弁護士に依頼した場合赤字になるかもしれず,ためらっていますが,最近友人から「交通事故の被害の場合は,弁護士費用がタダになることもあるらしい。」という話を聞きました。これはどういう話なのでしょうか?
交通事故の被害にあって金銭的な損害が発生した場合,その損害賠償を請求することができますが,請求する権利があるという話と現実にお金を回収するという話はイコールではありません。仮に,被害者が民事訴訟を提起して,裁判所としても一定額の損害賠償支払を命じる判決を下した場合には,加害者が所有する財産(不動産,預貯金等)や,加害者が働いている会社等からの給料を差し押さえて,損害賠償額の回収を図ることになりますが,裏を返せば財産が何もない人や働いていない人からは1円も回収することはできません。そういう場合,被害者の方は最終的に泣き寝入りせざるを得ません。
しかし,現実社会ではとてもたくさんの自動車が走っており,それに比例して交通事故の発生は避けられませんので,泣き寝入りする被害者の数を減らすために,自動車を保有する人は自賠責保険への加入が義務になっています。したがって,交通事故の被害者は,最低限自賠責保険に基づく救済は受けられる仕組みになっているのですが,ただ残念ながら自賠責保険による救済金額は傷害事案のケースでは上限120万円までとなっています。そして,ご質問の事案のとおり,自賠責保険はあくまで人身傷害に基づく損害をカバーするものであり,物的損害は対象外となっています。
つまり,加害者が任意保険に加入していないケースで,人身傷害に基づく損害が120万円を超過した,又は物的損害が発生したというときは,原則に立ち返って加害者に対して直接請求する他はないことになります。
さて,ご質問の事案では,自転車の買い替え費用10万円(壊れた自転車と同種同等のものを買い替えたと仮定し,買い替えの必要性・相当性に問題はないという前提です。)を加害者に請求したいが,弁護士に依頼すると赤字になるかもしれない,という点を懸念しています。
しかし,確かに質問者の友人のいうとおり,交通事故の被害にあったケースでは,弁護士に依頼する費用が0円で済むことがあり得ますので,ご質問者もまずはそのやり方を使えないかと調べてみると良いと思われます。
それは,被害者の方がご自身で契約している任意の自動車保険に,任意保険会社が弁護士費用負担するというオプション(特約)が付いているならば,任意保険会社が弁護士費用を負担してくれる形になる,という話です。
これはあくまでもオプションなので,人によっては付けていないこともあるし,あるいはそもそも自分は任意自動車保険に入っていないという方もいらっしゃいますが,例えば被害者の方の父親が任意自動車保険に入っていて弁護士費用特約が付いているならば,その分を使える,ということもあります。自動車保険ではないが,人身傷害保険には入っているという場合も,弁護士費用特約が付いている可能性はあります。結局,被害者の方またはその家族が加入している保険の契約内容がどういう内容になっているかによって決まるので,詳しくは保険会社に問い合わせされることをお勧めします。ちなみに,弁護士費用を保険会社が負担してくれると言っても,無制限ではなく,多くの場合は上限300万円までとなっています。
このように,弁護士費用特約が適用できる場合は,被害者が負担する弁護士費用のことは基本的に心配しなくても良くなるので,積極的に弁護士に依頼する方向で考えていただければと思います。
当事務所は,過去に豊富な交通事故事件の解決実績がありますので,個々の相談者の方のケースにあった最適な解決方法をアドバイスすることが可能です。何かお困りごとがあれば,お気軽にご相談ください。