Q13 車両の買替え費用の賠償を請求できるか

Q.私は先日交通事故に遭い,車両も破損しました。私としては,もうこの車両は縁起が悪くて乗りたくないので,新しい車両を買い替えたいと思っています。その場合,新車の買替え費用を加害者に賠償請求できるのでしょうか。

 

 結論として,事故車両から新しい車両に買い替えるための費用は,加害者に賠償請求できないのが原則です。

 交通事故で車両が破損した場合の損害賠償請求(いわゆる「物損」の処理)の基本的な原則としては,あくまでも修理費に限られます。そして,修理費と言うのも,当該交通事故に起因する車両破損について,必要かつ相当な範囲での修理費用に限られます。

 もちろん事故の状況によっては,車両の破損の程度が著しくて,もはや物理的に修理が不可能なレベルであったり,車両構造の安全性が確保できない危険な部位の破損であったりすることもあるので,そういう場合は修理をして交通事故以前の車両の状態に回復することはもはやできません。したがって,そういう場合では,新しい車両への買替え費用を請求することが認められることもあります。

 しかし,設問の事例のように,「縁起が悪いから乗りたくない。」という理由では,買替え費用が認められることはありません。

 他方で,車両の破損を修理することは物理的に可能ではあるけれど,その修理費がそれなりに多額であるため,もはや修理をするよりも同種・同程度の車両を買い替えた方が安く済む,という事例もあります。そういう事例を,俗に「経済的全損」と呼びます。

 経済的全損の事例では,実際にかかる修理費よりも,同種・同程度の車両を買い替えることに要する費用(車両本体価格に加えて買替手続費用も含む。)の方が低いため,損害賠償の金額はより低い金額の方に制限されます。なぜなら,損害賠償の基本的な発想は,あくまでも交通事故以前の財産状態を回復するという点にあるため,同種・同程度の別の車両を買い替えることができる金額が賠償されるならば,それによって元の財産状態が回復されたとみなされるためです。

 ところで,一口に同種・同程度の車両を買い替えることに要する費用と言っても,それがいくらであるかは一義的に定義できるものではなく,そのため物損の賠償金額について,その事故が経済的全損事案であるか否かを巡って加害者側(保険会社)と争いになることがあります。

 まず,同種・同程度の車両といえるための該当性の指標は,主に車種,年式,型,走行距離,使用状態などを見ます。そして,当該車両とそれらの諸要素が共通する車両の市場価値を調べることになります。ここで車両の市場価値を調べる方法は,今の時代はいろいろありますが,最も簡便な方法はインターネット上の中古車売買サイトが挙げられます。ただし,インターネット上の情報は玉石混淆であり,車両の市場価値もその例に漏れませんので,必ずしも十分な信憑性があるとは言えません。

 インターネットが普及する以前から使われている方法は,オートガイド自動車価額月報(いわゆるレッドブックと呼ばれる本)に記載されている中古車の取引価格を参照にする方法です。

 これらの情報を総合的に勘案しながら,加害者側(保険会社)との間で経済的全損の事案か否かを交渉していくことになります。

 しかし,その交渉はなかなか難易度の高い交渉になることもあり得ますので,その場合は交通事故事件に詳しい弁護士に相談した方がよいかもしれません。当事務所は,交通事故事件を豊富に取り扱ってきた実績がございますので,お気軽にご相談ください。