Q8 交通事故による車両修理のために発生した代車費用を損害賠償請求できるか

Q.交通事故に遭って車両が損傷しました。その修理のために修理工場へ車両を預けることになり,その期間別の車両をレンタルすることにしました。その修理が完了して私の下に車両が返ってくるまでの代車費用は,当然に全て加害者に請求できるのでしょうか。

 

 交通事故に伴い発生した車両損傷を修理するため,修理工場へ一定期間車両を預けることになり,その期間別車両をレンタルしたために発生した代車費用は,基本的に事故と因果関係のある損害として,損害賠償請求の中に含まれます。ただし,あらゆる交通事故のケースでも当然に加害者に請求できるものかと言われると,必ずしもそうとは言い切れません。

 代車費用が損害賠償の中に含まれるには,@代車を用意することに十分な必要性があり,A且つ実際に使用した代車のグレードや期間が相当な範囲に収まっていること,が満たされなければなりません。以下で,もう少し具体的に説明いたします。

 まず@についてですが,交通事故に遭った被害者にとって,別の車両を用意しなければならない必要性が存在しなくてはなりません。その意味で,例えば交通事故に遭ったのが仕事で用いる事業用車両であれば,仕事を遂行するために別の車両を用意しなければならない必要性は比較的すんなり肯定できるでしょう。逆に,交通事故に遭ったのは自家用目的の車両だったという場合,いろいろな見方があり得ます。自家用車だとしても,会社への通勤へ毎日使っているという事情があれば,やはり別の車両を用意しなければならない必要性は比較的すんなり肯定されると思われますが,他方で休日の外出でしか使っていなかった(しかもその頻度は非常に少ない)という事情なのであれば,必ずしも別の車両を用意しなければならないとは言い切れないでしょう。結局は,ケースバイケースというしかないのですが,客観的に見て必要性が乏しいと思われるようなケースであれば,加害者の加入している任意保険の会社も代車費用の賠償を拒絶することがあります。そこで折り合えないとしたら,民事訴訟を提起して裁判所に判断してもらうことになりますが,その際もいかに代車の必要性が強いかを,裁判所にも理解してもらえるように説得できる工夫が必要になります。

 次にAについては,代車を使用する期間や車種のグレードが相当な範囲に収まっているか否かで,争いになることがあります。

 期間については,基本的に被害車両を修理工場に預けて修理されている期間の代車費用という発想が原点になります。被害車両は既に手元に戻っているのに,なお代車を使用し続けたとしたら,それ以降の代車費用は損害賠償に含まれないのは,当然のことです。また,その逆の話で,修理が実際に始まる前だが修理工場に預けている期間の代車費用については,損害賠償に含まれる可能性も含まれない可能性も両方あり得ます。

 つまり,修理工場が実際に被害車両の修理に着手するには,加害者側の任意保険の会社と修理内容について協定を結んでいることが必要になるのですが,ケースによってはこの協定締結に至るまで多少の時間がかかることがあるからです。なぜそのように時間がかかるのかと言えば,単純に損傷箇所が多数かつ複雑であるため調査に時間を要することもあるし,保険会社の主張する損傷箇所と被害者の主張する損傷箇所が不一致のために交渉に時間を要することもあるし,被害者が社会通念上明らかに過大かつ不当な処置を被害車両に施すよう保険会社に要求しているために交渉に時間を要することもあります。結局は,この点もやはりケースバイケースであり,一概に断定することはできないのですが,代車を使用する期間の相当性につき心配があるという方は,弁護士にあらかじめ相談することをお勧めします。

 そして,代車として使用する車両のグレードについては,基本的に同種同等以下のグレードという発想が原点になります。被害にあったのは軽自動車なのに,代車として用意したのは外国産の高級車というのでは,明らかに代車のグレードの相当性が欠けます。

 注意が必要なのは,被害にあった車両が外国産の高級車であれば,同種同等のグレードの外国産高級車を代車として使用できる,というわけではないことです。明確な基準があるわけではないですが,外国産の高級車の代車として許容されるグレードは,国産の高級車まで,という傾向があると言われています。ただこの点も,個別の事情によっては,代車として同種同等グレードの外国産高級車を用意しなければならない必然性が強く存在するということもあり得るでしょう。そういう個別事情が客観的に認定できるのであれば,裁判所も外国産高級車の代車費用を認めてくれることもあり得ます。

 以上のとおり,一口に代車費用と言っても,どこまでの範囲のどこまでの金額が損害賠償として許容されるかは,個々の事案ごとの事情によって大きく異なります。ですので,代車費用を加害者に対して請求したいとお考えの被害者の方は,当事務所までお気軽にご相談いただければ幸いです。