Q7 交通事故による車両損害に対する修理費を損害賠償請求できるか

Q.交通事故に遭って車両が損傷しました。その修理のために,知り合いの修理工場へ車両を持ち込んで,修理費はこれくらいという見積もりをもらいました。このまま修理をしてもらって,かかった修理費を加害者に請求することで問題ないでしょうか。「協定」という言葉を聞いたことがあるのですが,どういう意味でしょうか。

 

 交通事故に伴い発生した車両損傷に対する修理費は,基本的に事故と因果関係のある損害として,損害賠償請求の中に含まれます。

 しかし,事故と無関係の車両損傷(以前から存在したキズやへこみ等)をついでに修理したり,あるいは原状回復の水準を超えて過剰な処理を施してもらったりしたことに対する費用は,損害の中に認められません。即ち,事故より以前の状態に戻すために,必要かつ適切な修理に要した費用ならば加害者は賠償責任を負いますが,それ以外のものは賠償責任を負いません。

 そのため,被害者が独自に修理工場と折衝をして,修理費を支払っても,加害者の目から見れば,「その費用は本当に必要かつ適切な修理に対する費用として適正な金額なのか?」という疑いを感じるかもしれません。まして,その修理工場が,被害者と個人的な知り合いだったという事情などが付け加われば,加害者はますます疑念を募らせるでしょう。

 そうすると,示談交渉においても,加害者はその修理費に納得せず,任意に示談に応じてもらえないこととなり,裁判所に訴訟を提起しなければならなくなります。そして,訴訟の中でも,加害者がその修理費は適正ではないと争ってきて,最終的に裁判所もかかった修理費全額を適正なものとして認定してくれなかったとしたら,結局加害者からの賠償を一部得られないことになり,被害者自身の持ちだしという結末になります。

 そういう結末を避けるためにも,加害者に何も相談せずに独断で修理費を支払うことは避けた方がよいでしょう。また,信頼のおける修理工場を選択することも必要です。

 加害者が,任意自動車保険に加入していて,その保険会社が損害賠償の支払いの対応をしてくれるという場合は,なおさらそのことが当てはまります。質問の中にある「協定」という制度は,正にそういう事態を防ぐために保険会社の運用の中で定められた制度です。

 つまり,加害者側の保険会社は,修理費に見合う金額を保険金として支払いをする前に,必ず「今回の事故で発生した損傷はどの部分か,それを原状回復させるにはおよそいくらくらいの費用がかかるか」などの点を,あらかじめ車両本体を現認した後でチェックします。そして,被害者側の保険会社や修理工場と協議・調整して,本件で必要かつ適切と認められる修理の範囲を確定し,それに対する適正な費用がいくらかということを精査して,保険会社同士及び修理工場ですり合わせをします。こうして,すり合わせがまとまった状態を「協定を結ぶ」と言うのです。

 協定を結んでいなければ,加害者側保険会社は修理費を支払ってくれませんので,被害者が独自に修理工場と修理契約を結ぶことは避けた方がよいでしょう。